永いバカンス
永かったバカンスのような日々が過ぎていった。
湘南での生活は、ほとんど子育てと、なによりサーフィンと共にあった。
PARISから帰ってきて、東京でのアート活動も視野に引っ越したのであるが、
以前からやりたかったボードサーフィンを始めると完全にどっぷりとはまってしまったのだった。
サーフィンをやりに海に行き、一生懸命に体を動かし、波と格闘しながら同化し、
波を待ちながら、美しい海からの景色を眺める。
連なった色とりどりの海岸線や、遠くに見える蒼くかすんだ島々。
何気ない、海で出会った人との会話やあいさつ。
そしてその後に食べる美味しいご飯。
本当に何を食べても感動するくらいにうまい!!
シンプルな喜びに心も体も満たされる。
頭や気を使うことの多い自分には、最高の息抜きであり、また新たな挑戦でもある。
そんなサーフィンを本当に愛してしまった。
愛知県豊田市に住んでいた時、海は小旅行感覚で出かける場所だった。
長い時間の運転と、高速道路料金に、ガソリン代。
通うのにハードルが高く継続性に欠けたので億劫になってしまい上達に時間がかかった。
それが、自転車で海に通えるようになってとても海が近い存在になった。
日頃からふらりと散歩に行ったり、波をチェックしにいったりと本当に生活の一部になったのだ。
最高に気持ち良い時間だ。
最初はパドリングもできず、全てが難しかったが、ジョジョに上達すると本当に楽しくなってくる。
なんでも最初は下手くそだから、おもしろいともいえる。
未知のものに立ち向かう面白さだ。
自然とガッツも出てくる。
負けず嫌いな自分は、燃えてくるのだった。
鎌倉エリアのあるポイントがとても気に入った。
そこで平日に出会う人たちは、たいていガツガツしていなかった。
ロング中心で、リーフとサンドのミックスで波質が良くとてもやりやすかった。
そこでローカルの人たちに敬意を表しつつ、励ましてもらった。
初めて心から愛したポイントだった。
本当に感謝している。ありがとうございました。
そこで度々顔を合わせて仲良くなった人に名前を聞かれて安藤ですと答えたら、
相手も同じ安藤さんだった。
ここでもなにか不思議なシンクロを感じたのだった。
もっと仲良くなりたかったが、旅たちの時が来た。
一度愛知県の実家に戻ることにしたのだ。
生活コストを下げて、アートにより集中するためだ。
海辺の暮らしだけでは満たされない何かが燻っていたのだ。
もっと製作したい。古い自分の殻をぶち壊して。
新しい始まりの帰郷となった。
そしてそこから次はNew Yorkを目指す。
自然と近い暮らしを志向しつつ。