Sep 24, 2012

La Seine パリ個展5

いよいよ、一時帰国の日が迫っていた。
実感は皆無だった。
ただ、その日が訪れる。
時間はよく川の流れに例えられる。
過去から、未来へと流れる不可逆性の流れとして。

出発前夜、作品の梱包や片付け、撤収準備に追われていた。
なにかとやる事が多く、動き回っていた。
しかし、パーティー好きの血が騒いだ。
今日も、友達を招いて、最後の夜を楽しみたい。
そう思ったのだった。
本当に懲りない男である。

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F.Bで告知すると、ぽつぽつと仲間達が集まってくれた。
しょっちゅう来ていた、フランス人の若者達、ケヴィン、ディアナ、ジセ。

まさにラストサムライ、個性的ないでたちと、ざっくばらんな人柄の熱い男、良平さんに紹介してもらった大事な仲間だ。

そして前のうちに住んでいて仲良くなったコロンビア人の映画を勉強する学生、ホアン。
彼らはみんな日本に興味がありケヴィンとディアナにいたっては日本に住みたいらしい。
本当に時代は変わった。
なにより俺のマインドは、完全に開いて、どこにでもいけるし誰とでも出会えると確信していた。世界は広くもあるが、実は狭くもある。

日本人の仲間も来てくれた。
すぐ裏の同じMaraisに住んでいて、デザイナーを志す、研二君。
彼とは、よく語り、飲み、一緒に、服をつくり、とにかくかかせない男だった。
たくさんの協力には感謝の一言につきる。

オペラを学び、陽気さと、バイタリティのある、しっかりものの陽子ちゃん。
彼女は、前述のケヴィン達とよく来てくれて、一番積極的に、抵抗なくフランス人達とコミニュケーションを取っていた。

でかい体と、優しい心を持つ沖縄出身のキヨさん。
いるだけでなぜか和む存在で、たくさんの友達が彼とも繋がっていた。
沖縄では店も経営していたらしい。

そんなメンツととにかく酒を飲み、語り、笑い、酔いしれた。
最高の感謝と、旅立つ切なさを同時に感じていた。

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最後の最後に、日本人の仲間だけが残り、みんなでセーヌ川まで歩いた。
Parisに引っ越してきてから、何度も歩いた道を通って。
満月が街を美しく照らしていた。

いつもの店が並び、賑わうMaraisには、自由と、洗練された美しさと、逞しい生活感が混在している。
道すがら、秋風とともにとても良い情緒を味わい、この夜を最高に満喫していた。
Parisの魅力はなんといってもこの情感につきると思う。
美しさとは裏腹の現実。光と陰が、モノクロームで交錯するこの街では、強さや、逞しさが要求される。
物乞いや、家のない人達の隣を歩き、夢を語り、光を浴びる。
この格差にも見える街の現実にもすっかりなれて、ちょっとやそっとのことでは、全く動じなくなっていた。
厳しさを揺るがす甘い幻想にも似た蜃気楼が、街からゆらゆらと立ち上り消える。
そんなひとときの、美しい眺めを見たくて、また街へ出る。
世界中の観光客は、Parisの美しい雰囲気を楽しむ。
世界中から来た生活者は、Parisのもっと激しく、美しい側面を見る。
まさに女神のようだ。
遠くから見ると美しい彫刻のような街Paris。
近くにいくと確かに、粗も見えるし、しわや、しみ、たるみも見えるかもしれない。
しかし、それを包み込む、彼女の優しさや、愛、芸術的なまでの情に触れた物は、彼女の虜になり、また舞い戻る。花束を持って。

作品の一部を解体し、その板に皆でよせ書きを書いた。
白い和紙をはった部分に、仲間達が、いろんな事を書いてくれた。
俺も何か書き、それをセーヌまで運んだ。

セーヌに着くと、俺は、セーヌの流れに、その板を投げた。思いっきり回転させて投げた。
すると板は、流れに逆らうように、流れている方向とは、逆に進んでいるように、反対の方向へとどんどん流れていった。
目の錯覚なのか?
目を疑った。
しかしそうみても逆に進んでいるように見える。
流れに逆らって。
ふとある事を思い出した。
最近呼んだ本で、時間は未来から、過去へ向けて流れていると。
一見分かりにくいこの考えが、すっと腑に落ちた。

帰り道、新たな夢を語った。
NEW YORKに行って、世界のトップで、最前線で活動、活躍したい。
そして、本当に世界中をArtでPeaceにする。
東南アジア、アフリカ、中東、南米、中米、欧州、北米、アジア全部行く!!
全部の場所で個展を開き、活動し、世界を地球を繋ぐ。
当然Parisには戻ってくるし長期で住むつもりだが、Parisから、より開いた世界へと飛び出す事を誓った。
その日はBlue Moonという、一月に二回満月が来る、特別な日だった。
その日誓った夢は必ず叶うという。
俺は、自分の未来の夢の実現を確信していた。
あの板のように、未来から、過去へ流れる時間の中で、俺には当然、未来のビジョンがくっきりと鮮明に見えていた。

また帰ってくると約束して、仲間達と別れた。
au revoir Paris!!
また帰ってきます!!
一年の実りは、確かな成長と、成功をもたらしていた。
新しい自信と、夢への限りない信念と信頼をたずさえて。
いよいよ母国日本に帰る。

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コメント2件

 sugepiー | 2012.10.18 18:46

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今日は。paris在住のsugepiーです。貴方の作品を「Tu france japon」のサイトで拝見し直接見に行こうと夫と思い色々調べていましたら帰国されてしまったのですね。非常に残念。平和な気持にさせてくれる絵を直接見たかった。
お住まいは名古屋ですか。

 Takuji Ando(安藤卓児) | 2012.10.25 14:13

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>sugepiーさん
気にかけていただいて、ありがたいかぎりです。
現在一時帰国中ですが、年末にはParisに戻っている予定ですので、次の展示には是非、お越し下さいませ。出来る限り、Peace-Artを楽しんでいただきたく存じます。
現在、愛知県豊田市という名古屋の隣の市にいます。Blog等も更新して行きますので、よろしくお願いします^^

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